私が不妊治療を始めたのは、39歳まであともう一歩という38歳の時でした。主人と結婚して、もともと結婚前から子宮筋腫をもっていたため、結婚してすぐに定期検診に行ったところ、産婦人科の先生に「子どもが欲しいなら、高度医療の治療を今すぐにでもうけるべきだ」と言われたのです。
年齢も、アラフォー間近だったので、不妊治療を受けることに、全く抵抗はなく、子どもを作るための早道なら、今すぐにでも治療を始めたいと思っていました。
偶然にも、私が住んでいる市に不妊治療センターがあったため、迷わずそこに通うことを決めて、予約を取ろうと思い電話をしました。しかし、その病院は、初診予約は毎月1日に予約を受け付けるというシステムになっていたため、すぐに予約をすることは不可能でした。
実はその時、主人には相談していませんでした。とても混んでいる病院のため、ひとまず予約を取ってから、主人に話そうと思っていました。
会社から帰宅して、疲れている主人に、いきなり「不妊治療」の話をすると、やはり困惑した様子でした。それもそのはずです。主人の年齢は、私の4つ下で34歳。結婚してまだ数か月しか経っていないのに、子どもが出来ない前提で、不妊治療を始めることに、かなり抵抗があったようです。自然妊娠にこだわっているわけではありませんでしたが、できれば自然妊娠を希望していたのです。
私は、自分の中で自然妊娠はほとんど諦めていたかもしれません。理由は年齢と子宮筋腫と冷え性だったからです。自分でも、どうして不妊治療に全く抵抗がなかったかは分かりませんでしたが、だからといって、不妊治療に抵抗がある主人の意見をないがしろにしてはいけないと思いました。
ただ、私が高齢のため、自然妊娠は難しいかもしれない。自然妊娠にこだわって、どんどん時間が経てば経つほど、妊娠は難しくなることだけは忘れないで欲しい。不妊治療を始めるといっても、いきなり高度医療の治療を始めるわけではないみたいだから、まずは自分が妊娠できる身体なのか、不妊の原因はないのかを調べるためにも、不妊治療センターには行きたいということは伝えました。
私が不妊治療を始めても、主人はまだまだ他人事のようでしたが、実は主人も数か月後には、彼自身も不妊治療を始めるきっかけがあったのです。
不妊治療を始める人のほとんどが、何年経ってもなかなか妊娠が出来ない。妊娠しても流産を繰り返してしまう。という人が多い中、私は、高齢=妊娠しづらいということから、すぐさまに不妊治療を始めました。しかし、私と同じ考えを持っている人は、少なくないと思います。
女性の社会進出が進むにつれ、晩婚化が進む今日、当然妊娠する女性の年齢も以前に比べて高くなってきています。しかし、女性が妊娠に最もふさわしいと言われる年齢というのは、25歳前後です。それは昔から変わっていません。
25歳頃の私と言えば、大学を卒業して、海外で仕事をしていた私にとって、結婚・妊娠の憧れはあったものの、まだまだ自分には関係ない話だと思っていた時期です。
私が、本格的に子どもが欲しくなったのは、2歳年下の妹が第一子を出産した時でした。私は31歳。まだ海外にいましたが、いずれ私も誰かと結婚して、妹のように自然に子どもが出来る日が来ると、普通に思っていました。
しかし、色々あり結婚が遅れ、気が付いたら高齢出産と言われる35歳をとうに過ぎている。
冷え性だし、生理不順ではないにしても、月経周期は少し長め。自然に妊娠できる自信がこれっぽっちもありませんでした。お金はかかるかもしれないけれど、早く子どもが欲しかったので、何も深く考えず不妊治療を始めることができました。
私と同じような思いで、不妊治療を始めた人もいますが、そうでない人もいます。それは20代の若い女性です。高齢=妊娠しづらいのですが、高齢=妊娠できないということはないのと同じで、若い=妊娠できるということではないのです。若い女性でも不妊症で悩む人は多いということが、不妊治療センターに通うようになって、知りました。
不妊の定義は、妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているのにもかかわらず、一定期間で妊娠しないことを言います。日本産科婦人科医は2015年に、一定期間を2年から1年間に短縮しました。
一般的に、健康な男女であれば、全体の約80%の夫婦が1年以内に赤ちゃんを授かることができ、2年以内になると、約90%の夫婦が赤ちゃんを授かることができると言われています。そのため、若ければ若いほど、妊娠できないことに焦りを覚え始め、不妊治療を始めることになるのです。
不妊治療を始めるきっかけは、人それぞれだとは思いますし、誰かから指図されることでもありません。不妊は病気ではないため、治療をしなくてもいいのです。治療をしたからと言って、必ずしも妊娠できるという100%の保証はありません。治療をしなくても、いつかは妊娠できるかもしれません。誰にも分からないのです。
そのため、若ければ若いほど、時間的余裕があるため「いつかは、いつかは」と待つことが出来るかもしれませんから、妊娠することに焦りがない人は、不妊治療を始めようとは思わないかもしれません。
年齢に関係なく、自然に妊娠できる可能性がほとんどないと感じ始めた人は、不妊治療を始めることに何の躊躇もないのだと思います。
私の主人の話に戻りましょう。不妊治療センターに通って、最初はタイミング法を数回試みましたが、妊娠に至らなかったので、人工授精をすることにしました。人工授精とは、男性から採取した精子を洗浄して、それを女性の子宮内に戻すことです。
その際、主人の精子に問題があることが発覚したのです。運動率・数が、平均数に達していなかったのです。この数では、人工授精を何度しても、妊娠は難しいだろうと、担当医師に言われてしまい、この言葉で、主人も高度医療の治療にステップアップすることに、やっと決意できたのです。
泌尿器科で診察してもらうと、主人は精巣静脈瘤であることが分かりました。
男性の不妊治療は、ほとんどの場合、泌尿器科で薬を服用していけば治るものだと言われています。(無精子症の場合は別ですが)主人も、クロミッドという内服薬を毎日服用しました。その薬の効果が表れてくるのは、約3ヶ月頃だと言われています。主人は私が妊娠するまでに、その薬を服用することを決めました。
服用していけば、精子の数が増え、運動率も高くなってきます。体外受精や顕微授精にステップアップをすることになれば、多くの精子は必要ありませんが、運動率は卵子に受精する際にとても関係してきます。
女性の場合は、月経などで自分が不妊症かもという、疑うことが出来ますが、男性の場合は、全く症状がないため、自分が男性不妊であるということに、全く気が付くことが出来ません。ですから、不妊治療を始めようと思ったときは、女性だけではなく、男性も検査することをおすすめします。片方だけが治療をしても、片方が不妊のままであれば、妊娠は成立しないからです。
最後に、不妊治療は怖いものでは決してありません。確かに金額的にも身体にも負担があることは事実ですが、何もせずに時間だけが、虚しく過ぎていくことはありません。すぐに妊娠が成立しなくても、自然妊娠より妊娠する可能性が高くなることは間違いありません。
もし、長い間妊娠が出来ず悩んでいるなら、すぐにでも不妊治療センターに電話することをおすすめします。