不妊治療とは、一定の期間たっても妊娠しない人へ、妊娠しやすくなるような手助けをする治療のことです。治療内容は、さまざまで、一般的には排卵誘発剤やホルモン投与などが行われます。
日本産科婦人学会によると「不妊」とは、妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交しているにもかかわらず、一定期間妊娠しないものを言います。以前まではその一定期間とは2年のことでしたが、2015年にその2年を1年に短縮することにしました。
不妊症で悩む夫婦は年々増えてきています。原因の1つとして、女性の社会進出が進み以前よりも晩婚化になったためです。女性は35歳を過ぎると、急激に妊娠する確率が減ります。しかし、多くの女性が35歳を超えてから結婚するため、自然と不妊治療する人が増えているのです。
とはいっても、35歳を超えたからと言って、全く妊娠が出来ないというわけではなく、妊娠しづらくなるだけです。中には、タイミングを取って1回で妊娠できる人もいます。また、20代で若いからと言って、必ず妊娠できるというわけではありません。20代の若い女性でも、不妊治療を行っている人は、大勢います。
結婚して何年たっても妊娠しないと、周りの人から「子ども作らないの?」と質問されてしまいます。不妊治療をしている人達にとって、これほど無神経な質問はないのですが、一般的には、ごく自然の質問なのです。
特に年配の人たちは、結婚=子どもができる。と思っている人たちが多いため、悪気があって聞くわけではありませんが、不妊治療患者にとって、これほど辛い質問はありません。
「作らない」のではなくて、「作れない」のです。
この状況を何とか脱却すべく行うのが「不妊治療」なのです。
不妊症は病気ではないため、治療とは言うものの、病気を治すものではなく、妊娠するために受けることを言います。
一般的な病気の場合は、頭が痛い、胸が苦しいなど、何か症状があって、その検査で原因が見つかったら、それを治療していきます。ところが不妊治療の場合は、ほとんどの場合が原因不明のため、一般的な病気のように、どこが悪いから〇〇を治療するということではないのです。
不妊症は、痛みや不快感もありません。妊娠を望んでいないのであれば、不自由なく暮らすことが出来ます。しかし妊娠を希望している人が、何年も妊娠できず検査をしてみても、ほとんどの人が、特定原因を見つけることが出来ません。健康な精子と卵子でも受精しないことだってありますし、受精しても着床しないこともあるのです。
妊娠が出来ないのは病気ではなく、妊娠できないのは何か障害があると考えます。その障害とは、受精障害やピックアップ障害、排卵障害、着床障害などがあります。また卵子の老化も妊娠できない要因の一つです。人間の身体が老いていくのと同じように、卵子も老いていくのです。卵子の老化により、卵子の質が下がるため、受精できなかったり、染色体異常が多く発生することがあります。
障害があっても、なくても、妊娠できない理由を、現代の医学では特定することはできません。これが、不妊治療の難しいところなのです。
まず不妊治療の流れとして、まず基本検査を行います。この基本検査で問題が見つからなければ、超音波検査で排卵日を予測して、性行為を行うタイミングを指導するタイミング療法を行います。このタイミング療法は、一般的に5~6回ほど行いますが、それでも妊娠できないと、人工授精にステップアップします。
半年ほどタイミング療法で妊娠に至らないと、排卵誘発剤を使用する人もいます。ここで使う排卵誘発剤のほとんどは内服薬で、身体への影響もあまりありません。排卵日を超音波で予測してもらうために、病院に行くため、わざわざ、不妊治療センターに行かなくても、一般の産婦人科で行えるものです。
そのため、このタイミング療法を行っている人は、不妊治療をしているという意識はあまりないかもしれません。
超音波検査で排卵日を予測しているのにもかかわらず、妊娠に至らないケースは珍しくありません。妊娠の確率は年齢によって変わってきますが、若くても100%ではないのです。
タイミング療法で妊娠に至らず、人工授精、体外受精、顕微授精とステップアップしてきます。ここから、健康保険が適用外になってしまうため、自費診療になります。人工授精は一般不妊治療費で、体外受精・顕微授精は特定不妊治療費として治療費が発生します。
人工授精の値段は、病院によっても異なりますが、体外受精や顕微授精ほど費用は掛かりません。およそ1回の治療で約30,000円です。目が飛び出るような金額ではないので、気軽にステップアップする人が多いです。
この人工授精での妊娠は、自然妊娠とさほど変わりません。精子を人工的に注入するか否かの違いだけです。この人工授精で妊娠することができたということは、精子と卵子が自力で受精して着床したということになるので、そういう点では、自然妊娠と変わらないと言えるでしょう。
人工授精を5~6回ほど行っても、妊娠に至らない場合は、いよいよ体外受精・顕微授精へとステップアップすることになります。
この体外受精・顕微授精は高度不妊治療となり、治療費がとてつもなく高額になります。病院によっても異なりますが、1回の治療で35万円~60万円ほどします。
特定不妊治療費として助成金を申請することができますが、治療費の全てをカバーすることはできません。そして、不妊症は病気でもないため、医療保険も使用することはできないのです。
体外受精・顕微授精にステップアップをすると、使用する排卵誘発剤やホルモン投与などで身体的負担もあります。通院する回数も増えます。そして高額の治療費を払っても、必ずしも妊娠できるという保証はないため、結果が陰性だった場合、精神的苦痛も伴います。
妊娠率は人工授精よりも高くなりますが、経済的負担、身体的負担を考えて、この体外受精・顕微授精にステップアップする人は、少し躊躇してしまうのです。
しかし、現代の医学では、妊娠するための治療の最終手段は、この体外受精・顕微授精なのです。ここまでステップアップしてきた不妊治療患者は、妊娠が成立するまで、この体外受精・顕微授精を続けなければいけません。
不妊治療費に一千万円近くかかっても、妊娠できない人もいますし、たった1回の体外受精で妊娠できる人もいます。妊娠は本当に奇跡なのです。
不妊治療をしている人は、病院だけの治療以外にも、自分なりの努力をすることを惜しみません。体質改善だったり、食事制限などです。
妊娠できない原因がはっきりしない以上、妊娠できるために、自分でできることは、するしかないのです。ただ与えられる薬を服用して、担当医師にお任せするだけという不妊治療患者は少ないと思います。
私も、鍼、整体、ヨガ、サプリメントなど、妊娠するために、パート代のほとんどを費やしていました。すぐに結果は出ませんでしたが、諦めるわけにはいかなかったのです。
体外受精・顕微授精以上のステップアップはない。ここで妊娠が出来なければ、一生妊娠が出来ないかもしれないという思いで、不妊治療に臨みました。
不妊治療期間中、全ての人に不妊治療をしているとカミングアウトはしていなかったので、時には「子どもは?」と言われ、「まだなの」と答えると、少し場の悪い雰囲気になったり、同情されたように感じました。
できれば不妊治療をせず、自然妊娠できるのが、ベストなのですが、それが不可能な人は、不妊治療をしなければいけないのです。もし本当に妊娠したいのであれば・・・