私は37歳から本格的な妊活を始めました。
検査をしたところ、夫の精子に問題があってなかなか子どもを授かることができないことが分かりました。
私の方は大きな問題は見つからなかったものの、年齢的に考えて卵子が衰えているだろうと言われました。
このままでは自然に妊娠できる確率は、相当低いという診断でした。
そのため、妊活を始めても簡単に妊娠できるわけでもなく、不妊治療には長い年月と費用を費やしました。
ここでは、私が体験した不妊治療の中から人工授精について、治療内容や費用、感じたことなどを詳しくご紹介したいと思います。
人工授精は、簡単にいうと精子を子宮に注入して妊娠させるという治療法です。
私が通っていた病院では、精子を遠心分離機にかけて質の良い精子だけを集めていました。
他にもホルモン療法によって、卵子の成長を助けたり排卵を促進したり、子宮の内膜を厚くして受精卵が着床しやすい環境を作ったりもしました。
人工と言っても少し手助けするだけで、基本的には精子と卵子の力によって受精させるので、かなり自然妊娠に近い治療法だと思います。
費用は病院によっても異なりますが1回2~3万円が相場で、私の病院では1回2万円の自費診療でした。
1回2万円って、冷静に考えたら結構高いですよね。
でも体外受精や顕微授精をするとなったら、人工授精の10倍以上の費用がかかってしまうので、2万円でも安く感じていました。
1回の人工授精をするのに何度か通院が必要
人工授精は排卵のタイミングを狙って行います。
次の排卵が行われるまでに飲み薬や注射などで卵子の成長を促していきます。
卵子の大きさをチェックするために、最低でも3回くらいは病院に通う必要がありました。
毎回内診をしなければならないので初めは憂うつでしたが、特に痛みがあるわけではなく慣れてしまえば大丈夫でした。
それよりも、仕事との両立がとても大変でした。
病院に行くタイミングは先生から指定されるので、自分では日にちを選ぶことができません。
仕事でどうしても通院が難しい場合は、最悪の場合その月は治療をお休みしなければいけなくなってしまうので、通院日を予想しながら仕事のスケジュールをやりくりしていました。
私が通っていた病院は予約制ではなく、診察券を出した順に診察を受けるシステムでした。
一番先に診てもらえればギリギリ遅刻しないで済んだので、毎回早起きして病院が開く前からずっと並んでいました。
職場では、同僚の女性には不妊治療を始めたことは伝えていましたが、男性の上司にはどうしても言い出せずにいたので、治療で仕事を休まなければならない時は理由を考えるのがすごく大変でした。
人工授精の場合は助成金もないので、全て自己負担です。
当然のことながら、不妊治療のために仕事を辞めることはできませんでした。
人工授精の治療自体は思っていたよりも楽
そろそろ排卵というタイミングになると、先生から「明日の朝精子を持ってきてください」と言われ、試験管を手渡されました。
うちの病院では、夫が精液を採取するために病院に出向く必要はなく、自宅で採取したものを試験管に入れて私が持参すればOKでした。
ただし、持参する間に冷やしてはいけないので、お腹の中に入れて温めながら持ってくるように言われました。
病院につくとすぐに精子を遠心分離機にかけますが、これにだいたい30分くらいかかりました。
無事に良い精子だけを集められたら、子宮の奥に注入していきます。
細い管を子宮の奥に入れるのでちょっとした違和感はありますが、我慢できないほどの痛みではなかったです。
注入はほんの数分で終わりますが、すぐに立ち上がるとせっかく奥にいれた精子が外に出てきてしまうので、しばらくそのまま横になって休むように言われました。
不妊治療を始める前は痛くて辛いというイメージしかありませんでしたが、実際に初めて人工授精をしてみたら、あまりにも簡単に終わってしまったので「こんなに楽ならもっと早くやっておくんだった」と後悔しました。
本当にこれで妊娠できるならなんて簡単なんだろうと思いましたが、現実はそんなに甘くはありませんでした。
基礎体温計を見るのが怖い!リセットの繰り返し
人工授精が終われば、あとは無事に妊娠するのを待つだけです。
毎朝起床時に基礎体温を測って、体温が上がり続ければ無事妊娠ということになります。
でも、基礎体温というものは厄介で、私はかなり翻弄されてしまいました。
ちょっとした体調や気温の変化や計測する時間の違いなどで、体温が予期せぬところで上がったり下がったりして、理想的な形のグラフにならないことも多いんです。
それでも体温が高めで維持していると「これはもしかして…?」とついつい期待しちゃっていました。
でも結局は妊娠しておらず、予定通りに生理が来てしまいました。
人工授精の治療自体はそんなにきつくはなかったんですが、毎回リセットしてしまうのは精神的にかなりつらかったです。
生理が来てすぐの時って出血量がそれほど多くないので「もしかしたら着床出血じゃないか」と思い込もうとしていました。
2回、3回と人工授精を繰り返すたびに、生理が来た時の落胆は大きくなっていきました。
だんだん基礎体温計を見ることすら怖くなり、ついに先生には内緒で基礎体温をつけることをやめてしまいました。
病院には適当に記入した体温表を持っていくようになり、そのせいで治療の妨げになってしまったのかもしれません。
体外受精を勧められてもあきらめきれず
先生からは年齢的にも条件的にも早く体外受精をした方が良いと勧められていました。
でも、費用が10倍以上になるし痛みや副作用を伴う可能性もある治療なので、なかなか踏み切れませんでした。
基本的には人工授精を5回試してダメなら体外受精にステップアップするべきだと言われていたのに、私は無理を言って10回も人工授精にチャレンジしました。
しかし、結果的には10回やっても妊娠することはできませんでした。
かかった費用約20万円と、治療に要した1年という貴重な時間を無駄にしてしまいました。
先生からは「これ以上人工授精の治療はしない」とはっきり断られ、目の前が真っ暗でまさに先の見えないトンネルに迷い込んだ気持ちでした。
体外受精をしても妊娠できるとは限らないわけだし、多くの夫婦が最低3回程度は体外受精をしないと妊娠まで至らないと聞きました。
今までと治療費のケタが違いすぎて、本当にこんなに高額な費用をかけなければならないのかと悲しくて仕方ありませんでした。
それでも「治療を諦めてこのまま子どものいない人生を歩むのか?」と自分の心に問いかけてみると「それは絶対に嫌だ」という気持ちしか湧いてこなかったんです。
他に道がないのならこのまままっすぐ進むしかないと、私はようやく腹をくくりました。
人工授精で妊娠したいなら早めにスタートすべき!
人工授精を10回も繰り返しても妊娠することができなかったのは、おそらく私の卵子が老化していたからだと思うんです。
子宮内膜を厚くして着床しやすくするのはホルモンを使えば簡単にできますが、老化した卵子を若返らせる薬はありません。
人工授精は自然妊娠に近いので、精子と卵子そのものにパワーがなければ受精できるわけがありませんよね。
ですから少しでも若いうちに治療を始めた方が、成功率はぐんとアップすると思います。
不妊治療の中でも比較的痛みや副作用が少ない治療法なので、実際にやってみると意外と平気だと感じられると思いますよ。