人工授精…。妊活している人でなくても聞き覚えのある言葉ですが、どのようなものでしょうか。
ウィキペディアによると、[精子の運動性や数に問題があり妊娠に困難がある場合、性交障害(インポテンツ)がある場合、女性生殖器の狭窄などによって精子の通過性に問題がある場合などに行われる]とあります。
でも、実際どんなことをするのか、いろいろなサイトを見てもいまいちピンと来ませんよね。そこでこの記事では、私たち夫婦が実際経験した「人工授精」にまつわるアレコレをお伝えしていきたいと思います。
人工授精を始めてみた
人工授精を始めるまで
私たち夫婦が結婚したのは私が35歳、夫が42歳のときでした。年齢もあり、結婚後すぐ自分なりのタイミング(ルナルナのような排卵日予想アプリ)で妊活を始めました。
私は若いころから生理不順でしたので、一般の婦人科でホルモン補充の薬を内服していました。しかし、基礎体温までは考えが及ばず測っていませんでした。そういった夫婦生活を続けて1年間、私が妊娠することは全くありませんでした。
まず、夫婦で検査してみよう
日本産科婦人科学会によると、不妊とは「1年以内に妊娠に至れない状態」だそうです。私たち夫婦は話し合いの上、不妊専門クリニックで夫婦ともに検査してもらいました。結果、私は軽い排卵障害、夫は乏精子症(自然妊娠は難しいレベル)でした。
医師は迷わず私たちに人工授精をすすめてきます。それでも人工授精が有効なのは、36歳という私の年齢から「3回、多くても4回まで」ということでした。
人工授精が有効な条件
人工授精はAIH(Artificial Insemination by Husband:配偶者間人工授精)であったり、IUI(intrauterine insemination:子宮内人工授精)などといわれます。呼び名は違いますが、やることは同じです。そして、この人工授精が有効である条件、すなわち妊娠につながる条件がいくつかあります。
- 排卵があること
- 子宮があること
- 卵管が少なくとも片方開通していること
- 精液の中にある程度の元気な精子がいること
などが有効条件となります。また、これ以外にも医師にすすめられる条件として、軽度の男性不妊、ED(勃起障害)、頸管粘液が少ない、夫婦どちらかあるいは両方になんらかの性交障害がある、タイミング法を半年以上行っても妊娠しない、抗精子抗体が弱陽性という方が適応とされている場合が多いです。
人工授精にトライ
私たちは検査などの結果により、はじめから人工授精を行いました。
医師の指示通り、毎月クロミッド(排卵誘発剤)を内服し、人工授精をしたい日に合わせてHCG注射で排卵を誘発します。人工授精の日には夫は院内で採精(自宅採精より精子が少しでも新鮮であるように)し、培養室で精子を約1時間ほど調整します。それから私の子宮内に細くやわらかいチューブで精子を注入する、というものでした。
私の場合、思ったよりも痛くないし、違和感もありませんでした。
人工授精の妊娠率は高いか低いか
ここで問題です。人工授精で妊娠できる確率はどれくらいでしょうか?
一般的に平均して10%程度といわれています。タイミング法で約5%ですから、ほぼ2倍妊娠確率が上がることになります。しかし、年齢に応じて差はあれど多くとも5~6回トライして妊娠しなければ、それ以降の人工授精による妊娠は難しいともいわれています。
私たちは人工授精を3回試みましたが、やはり妊娠できませんでした。
体外受精もしてみた
その結果、私たちは体外受精に進むことになりました。夫の精子の状態が良くないので顕微授精です。その受精卵を移植しましたが化学流産しました。
この時点で医師と意見が合わなくなり、他院へ転院することになります。他院でも顕微授精し、ここでようやく妊娠判定が出ました。
しかし、心拍確認できず繋留流産と診断され、子宮内容除去術をうけました。念のため、内容物の染色体検査も行いましたが、結果は測定不能というかなりレアケースでした。
人工授精とタイミングに戻る
一度妊娠できたものの流産してしまい、心身ともにとても深いダメージをうけました。物理的には身体が回復次第、残っている凍結受精卵があったので移植することは可能でした。しかし、精神的ダメージのほうは重く…、かといって、治療はやめたくない。そこで、医師と相談し、あえて人工授精にステップダウンすることにしました。
ステップダウンの理由
それから、約10ヶ月間人工授精とタイミング法を続けました。それぞれの割合は半々といったところでしょうか。なぜステップダウンしたかというと、私がアルバイトを始めたためです。
流産というショックから抜け出すためでもありました。それに次回以降の移植への資金作り、あわよくば出産資金も…という目的でもありました。人工授精やタイミング法でも妊娠確率は下がるとはいえ、妊活を続けるモチベーションには十分なりました。
人工授精とタイミング法を使い分ける
人工授精とタイミング法は、私や夫の仕事の都合によって使い分けていました。夫婦とはいえ休日はバラバラです。人工授精を行うにはかなりスケジュール調整が必要でした。
できる限り努力したって、自由自在に排卵を操れるわけではないからです。なので、夫婦お互いの都合が合えば人工授精、合わなければタイミング法で…というふうに使い分けていました。
結果とオプション検査
約10ヶ月間、人工授精とタイミング法混合で妊活した結果、一度も妊娠しませんでした。これらの方法は私たちには合っていなかったようです。
しかし同時並行で、不育症のオプション検査もしていました。検査の結果、甲状腺機能が良くなかったり、血液が固まりやすいなどの項目でばっちりひっかかりました。
不育症というのは2回以上の流産(胎嚢確認以降)と定義されています。ですが、再度受精卵を移植するときは、不安材料は少しでも減らしておきたかったのです。
不育症検査の費用も決して安くはない(約6万円)ですが、妊娠したときのリスクを知ることができ、かえってよかったと今では思います。
人工授精は回数を決めておく
結局、私たちは6回以上人工授精に挑みましたが、何の成果もありませんでした。
人工授精というものは、何度くりかえそうと妊娠できない人は妊娠できない。そのことを自ら実証してしまいました。結局、凍結受精卵を移植して妊娠・出産できたのですが…。
妊活から少しでも早く卒業するために
いかがでしょうか?このようなことは、よくありえるケースなのです。
あらかじめ医師や夫婦間で相談の上、人工授精の回数は決めておいたほうがいいといえます。
この記事を読んでおられる中には、体外受精に抵抗がある、あるいは経済的な理由などで、人工授精を続けられるご夫婦もおられるでしょう。その方針を私は否定しません。
しかし、妊活は常に時間との戦いです。
自然妊娠やタイミング法、人工授精で妊娠・出産される方も大勢いらっしゃいます。それでも妊娠できなかったとき、あなたならどうしますか?
体外受精にステップアップするかしないか…、妊活を考えるなら、ご夫婦で一度は話し合っておかれるほうが良いかもしれません。妊活期間は少しでも短くしたいものですね。